Friday, January 31, 2025

源氏物語の草木 ー1.桐壺 (きりつぼ) の巻  ハギ、ヤエムグラ、キリ

 

かなり以前に

<源氏・拾花春秋 -源氏物語をいける>

田辺聖子・解説/桑原仙溪(桑原専慶流第十四世家元)・挿画・生花解説

の文庫本を私の住む香港で買って読んだことがある。<2002年印刷、初版>とあるのでひと昔前だ。内容はなぜかあまり記憶になかった。今回 <花、草木のやまとことば>探しに読みかえしてみた。<sptt 花、草木のやまとことば>の書きはじめは2019年だが、花への興味は、しろうとレベルだが、昔から少しあり、2008年 (北京オリンピックの年) ころに、日曜日に花のスケッチをし始めてからからは草木の花と名前に興味が移って今日に至っている。

<花、草木のやまとことば>探しで読み返してみると、そこそこに<花、草木のやまとことば>は出てくるのだが、それよりもむしろ、田辺聖子の解説で長編の源氏物語のストーリの概略がよくつかめたというのが実際だ。一方、桑原仙溪の源氏物語五十四帖に沿った花、草木の話と生け花スケッチがあるのだが、残念ながら五十四帖の各帖の話と花、草木の話は全くちがっている場合が少なくない。また生け花スケッチの方も花、草木のスケッチはいいが、生け花スケッチなので器が描かれているのだが、器がいかにも<取って付けた>感じで全体的に精彩にかける。

主に原文と現代語訳が並んでいる<源氏物語を読む>を利用。

http://james.3zoku.com/genji/index.html

1.桐壺  きりつぼ

タイトルは<桐壺>は桐壷帝と源氏の母の名<桐壺の更衣> からきている。また<桐壺の更衣>が住む内裏の場所でもある。

文庫本では次の草木が取りあげられている。

宮城野の露吹きむすぶ風の音に小萩がもとを思ひこそやれ 

宮中に吹く秋風の音を聞くにつけても涙を催し、子供のことを思いやっているのだ。;「宮城野」は宮城県仙台市の東にある野。萩の名所で歌枕(新潮)/宮城野を吹き渡って、露の玉をむすばせる野分の風の響きを聞くにつけて、小萩がその風に痛めつけられはしないかと、いつしか思いをそちらに馳せてしまうことである。「宮城野」は、奥州の萩の名所、宮城野と書くので、宮中の意に用いた。「小萩」に子の意を含めて、若宮に擬してある。(玉上)


紫式部は当時の一流歌人で、その和歌にはいくつかの技巧が施されているため、しろうとには上のような解説がないと、隠された意味がつかめない。

ハギ ー マメ科 

以前に<マメ (科) >をとりあげているが、ハギは抜けている。マメ科は超大家族で、<ジャックの豆の木>はつる性でなく、木性。

Wiki の解説



ハギ(萩、胡枝花 Lespedeza)は、マメ科ハギ属の総称。落葉低木。七草のひとつで、花期は7月から10月

特徴

数種あるが、いずれも比較的よく似た外見である。

背の低い落葉低木ではあるが、木本とは言い難い面もある。は木質化して固くなるが、年々太くなって伸びるようなことはなく、根本から新しい芽が毎年出る。直立せず、先端はややしだれる。

葉は3出複葉、秋に枝の先端から多数の花枝を出し、赤紫の花の房をつける。果実は種子を1つだけ含み、楕円形で扁平。

荒れ地に生えるパイオニア植物で、放牧地や山火事跡などに一面に生えることがある。



蝶型の赤紫の花もさりながら、風にゆれる姿が美しい。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<胡枝子 Lespedeza>のメモ書きがある。 

 

文庫本には出てこないが、原文にはヤエムグラが出てくる。

 ”
命婦、かしこにで着きて、かど引き入るるより、けはひあはれなり。やもめ住みなれど、人一人の御かしづきに、とかくつくろひ立てて、 めやすきほどにて過ぐしたまひつる、闇に暮れて臥し沈みたまへるほどに、草も高くなり、野分にいとど荒れたる心地して、月影ばかりぞ八重葎やへむぐらにもはらず差し入りたる。

 ”

この前に  


野分立ちて、にはかに肌寒き夕暮のほど、常よりも思し出づること多くて、 靫負命婦ゆげひのみょうぶといふを遣はす。夕月夜のをかしきほどに出だし立てさせたまひて (後略)

というくだりがあり<月影ばかりぞにもはらず差し入りたる>に呼応している。<夕月夜>や<月影>はいい大和言葉だと思うが、残念ながら死語に近い。

 
ヤエムグラ

Wiki の解説


ヤエムグラ(八重葎、Galium spurium var. echinospermon)は、アカネ科越年草。道端の雑草としてごく普通にみられる。種子はひっつき虫の性質も持つ。

特徴

華奢な一年草または越年草[1]に4稜があり、は狭い倒卵形で6-8枚が輪生する。茎には下向きのがあり、他の植物に寄りかかり、棘を引っ掛けながら立ち上がる。衣服などに付着するので、これを切り取って服に付ける子供の遊びがあった。また、果実には鉤状のが生えており、これも衣服などに付着する。これは種子散布に関係するものと思われる。

古典の中のヤエムグラ

万葉集和歌に詠まれた「やえむぐら」とは、本種を指している言葉ではなく「『むぐら』と総称される各種の雑草」もしくは「それらがよく茂った状態」のことである。また、小倉百人一首にも収録されている恵慶法師の作品、

八重むぐら しげれる宿の さびしきに 人こそ見えね 秋は来にけり

に詠われている「八重むぐら」は、秋に繁茂するアサ科カナムグラであると思われる

カナムグラ(鉄葎、Humulus japonicus)はアサ科カラハナソウ属一年草。 和名「鉄葎」は強靭な蔓をに例え、「葎」は草が繁茂して絡み合った様を表すように、繁茂した本種の叢は強靭に絡み合っており、切ったり引き剥がしたりすることは困難である。 後述ヤエムグラヤブムグラ等、本種と似た種小名の植物は多いが、本種とは系統的に離れたアカネ科に属するものが多い。漢名は律草(りつそう)。)

 ” 

 
Wiki の解説からすると、桐壺の巻のヤエムグラ (八重葎) は<古典の中のヤエムグラ>のようだ。解説を読む繁殖力旺盛な雑草なのだが、和歌語でもあるようだ。

 

日本大百科全書(ニッポニカ) 「むぐら」の意味・わかりやすい解説

 ”

カナムグラをさすとも、ヤエムグラなどを含めたつる性の雑草総称ともいう。荒廃した、また、みすぼらしい家や庭の景物として、蓬(よもぎ)や浅茅(あさぢ)とともに、文学作品に早くからみられ、すでに『万葉集』から「八重(やへ)葎」「葎生(ふ)」などと歌語化して用いられている。平安時代以後は、歌語としては「八重葎」に固定して、(中略)「葎の門」「葎の宿」というような歌語が生じるが、この前提として「葎の門に住む女」、荒廃した屋敷に美女がひっそりと隠れ住む、というようなロマン的な場面が物語によって形成され、読者に歓迎されて類型化した。『伊勢物語』三段の「思ひあらば葎の宿に寝もしなむ引敷物(ひじきもの)には袖(そで)をしつつも」、『大和(やまと)物語』173段の良岑宗貞(よしみねのむねさだ)の話、『うつほ物語』「俊蔭(としかげ)」の若小君(わかこぎみ)(藤原兼雅(かねまさ))と俊蔭女(むすめ)との出会いの場面などがその例であり、『源氏物語』「帚木(ははきぎ)」の雨夜の品定めで語られる「さて世にありと人に知られず、寂しくあばれたらむ葎の門に、思ひのほかにらうたげならむ人の閉ぢられたらむこそ、限りなく珍しくはおぼえめ」などはその典型といえよう。


ヤエムグラの方は Wiki の写真を見る限り、普通の雑草にない特徴がある。また、<ムグラ>は雑草らしい名前だ。

 

 <桐 (キリ)>自体はストリーに出てこないが、<挿画・生花解説>では桐が取り上げられている。キリの花は紫色で、源氏物語の明らかな、または隠れテーマカラーだ。紫式部、紫の上 (登場人物)。上の<萩の歌>の萩 (ハギ) も赤っぽい紫色だ。

 

桐 (キリ)

Wiki の解説


キリ(桐学名: Paulownia tomentosa)は、シソ目キリ科キリ属落葉広葉樹。別名、キリノキともよばれる中国名は毛泡桐で漢語の別名として白桐、泡桐、榮がある。



キリ科はまだ取り上げていない。
桐 (キリ) はキリ科、キリ属のキリなのだ。香港ではかなり前に九龍公園で運よく開花時の<泡桐>を見たことがあるが、感動的な美しさは覚えているが、花の色が思い出せない。

 

 

sptt

 

 

 








五十四帖の各帖の題目自体に<花、草木の名>、および<花、草木>関連 (と思われる) が使われているもの

2

帚木

ははきぎ

4

夕顔

ゆうがお

5

若紫

わかむらさき

6

末摘花

すえつむはな

7

紅葉賀

もみじのが

8

花宴

はなのえん

9

あおい

10

賢木

さかき

11

花散里

はなちるさと

15

蓬生

よもぎう

20

朝顔(槿)

あさがお

22

玉鬘

たまかずら

26

常夏

とこなつ

30

藤袴

ふじばかま

31

真木柱

まきばしら

32

梅枝

うめがえ

33

藤裏葉

ふじのうらば

34


若菜

上・下

わかな

35


柏木

かしわぎ

43

紅梅

こうばい

46

椎本

しいがもと

48

早蕨

さわらび

49

宿木

やどりぎ


 

1

桐壺

きりつぼ

 <桐壷>は<桐の壺>

 

五十四帖の題目 

第一部

1

桐壺

きりつぼ

2

帚木

ははきぎ

3

空蝉

うつせみ

4

夕顔

ゆうがお

5

若紫

わかむらさき

6

末摘花

すえつむはな

7

紅葉賀

もみじのが

8

花宴

はなのえん

9

あおい

10

賢木

さかき

11

花散里

はなちるさと

12

須磨

すま

13

明石

あかし

14

澪標

みおつくし

15

蓬生

よもぎう

16

関屋

せきや

17

絵合

えあわせ

18

松風

まつかぜ

19

薄雲

うすぐも

20

朝顔(槿)

あさがお

21

少女

おとめ

22

玉鬘

たまかずら

23

初音

はつね

24

胡蝶

こちょう

25

ほたる

26

常夏

とこなつ

27

篝火

かがりび

28

野分

のわき

29

行幸

みゆき

30

藤袴

ふじばかま

31

真木柱

まきばしら

32

梅枝

うめがえ

33

藤裏葉

ふじのうらば

第二部

34


若菜

わかな




35


柏木

かしわぎ

36


横笛

よこぶえ

37


鈴虫

すずむし

38


夕霧

ゆうぎり

39


御法

みのり

40


まぼろし

41


雲隠

(くもがくれ)

第三部

42

匂宮
匂兵部卿

におう(の)みや
におうひょうぶきょう

43

紅梅

こうばい

44

竹河

たけかわ

45

橋姫

はしひめ

46

椎本

しいがもと

47

総角

あげまき

48

早蕨

さわらび

49

宿木

やどりぎ

50

東屋

あずまや

51

浮舟

うきふね

52

蜻蛉

かげろう

53

手習

てならい

54

夢浮橋

ゆめのうきはし


 

 

 

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